会報誌(DDKだより)

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2000年11月発行 第78号 DDKだより

巻頭言:「低価格路線」、二つの様相

専務理事  石田 仁       
    経営コンサルタント・社会保険労務士  
    東京中小企業家同友会理事  
    同 専門家グループ部会幹事長  
    東京都労働経済局 労働講座講師  
    著書『就業規則で会社がかわる』  
    (労働旬報社)ほか論文多数  

  
 


 カジュアル衣料チェーン「ユニクロ」を展開するファーストリティリングが今年8月期決算で売上高2,289億円、経常利益604億円の増収増益になると報道されました。
 ブームの火付け役となったのは昨年冬の1,900円のフリース、更に今春の2,900円のデニムシャツ、夏のTシャツ。今また2,000円台のチノパンツが関心をよんでいます。製造元の強みからウエストサイズごとに5種類のまた下長さを提供できるそうだ。コンセプトは安くて品質が良いこと、若者や中高年の心を捉えるセンスがあります。
 他方、小売業の雄、ダイエーの凋落が目立ちます。系列子会社の株式売買をめぐるインサイダー疑惑で鳥羽社長が辞任し、その収拾をはかるゴダゴタで中内オーナーが代表権を返上という異常な事態。14日発表となった2月決算見込みでは売上高2兆円、経常利益50億円の予想です。利益では何とユニクロの12分の1。店舗拡大による負債増加と様々な業態を手懸ける非効率性、商品力の弱さからくる収益性の低さが主たる原因と言われています。改革の一つとして店舗のリストラと同時に有力テナントの誘致が進められていますが大手スーパーやデパートの二番煎じに過ぎず、旧来手法からの脱却にはほど遠い。
 消費者は性別、年齢、階層により様々な趣味嗜好を持っているのであり、単に専門店を入れたからといって成功するものでもない。洋服、靴、雑貨など日常の商品が使いやすさやセンスなどで統一される時に初めて消費者が動くはずです。こうして、今、続々登場している売場の枠を超え、生活をトータルに演出できる複合ショップが一つのヒントを与えてくれるように思います。