会報誌(DDKだより)

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2000年05月発行 第72号 DDKだより

巻頭言:「間違った経営」からの脱出作は?

参与  田口 良一       
     国民金融公庫出身
     祝経営研究所次長
     最近の主な論文
     「商工ローンの膨張と銀行の責任」
     (『世界』2000年1月号)
  
  
 


 ①『中央公論』3月号で宮内義彦オリックス社長と田原総一郎氏が対談している。題して「新日本型経営の挑戦」というもの。―「家屋敷まで担保に入れ、個人連帯保証もして、最後は夜逃げ同然に追い込まれる。事業は体をはってもよいが、命懸けでやるのは間違いだ。資本主義だから、自分の資本だけを出して、その範囲で事業して駄目だったらお終い。家屋敷はきっちり残る。そしてまた次の事業をする」「しかし政府系金融機関でも個人保証させる。商工ローンも個人保証させるわけです」「そこまで借りるほうが悪いんで、銀行が悪いという議論はおかしい」「日本の中小企業経営者(の経営哲学)はほとんどは間違いだ」。
 さらに次のように付け加える。「うち(オリックス)にかぎらず東証一部レベルの企業は個人保証や担保提供はないと思いますよ」と。
 彼の地位(首相直属の行革本部・規制緩和委員長)からみて、この主張はほとんど国策である。10億円で売り飛ばされる日債銀は、実質的にはオリックスの傘下に入るといわれている。彼の融資方針を知りたいものだ。
 ②中小企業家のほとんどが陥っている「間違った経営」は市場によって罰せられても自業自得として救援の対象ではない。その趣旨で中小企業基本法が改定されたのである。
 それでは中小企業の未来はどうなるのか。退職金を元手としたリストラ失業者の新規参入がターゲットである。
 史上空前の大不況を闘い抜いている既存の中小企業は、「間違った経営」からあらゆる手法を駆使して脱出しなければならない。新規開業なみの変身が求められている。
 しかし、「そごう」デパートの例のような債務免除を認めてくれる銀行はあるまい。民事再生法にも関心が集まっている。第二会社への営業譲渡による変身もある。
 要は「貸し手無責任」をふりかざして、借り手側に無限責任を追及してくる銀行に屈せず、銀行に「貸し手責任」を自覚させる自衛の行動があるのみである。