会報誌(DDKだより)

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2025年12月発行 第379号 DDKだより

巻頭:隠れた米騒動


石田 仁

 昨年の8月上旬、大地震がやってくるとの思惑か、店頭からお米が減り始め、いつの間にか下旬になると消えた。5キロ4500円前後に推移。春先のほぼ倍の価格になった。令和の米騒動の発端。
 年が明け、1月に備蓄米放出の閣議決定。3月上旬に、農産局政策部長の講演を聞く。“24年は、それなりに豊作、本年も不足になることはない。農協等の出荷業者を通じた流通は全体の4割、残り6割は農協を通さず卸業者、販売業者、産直、自家用と別ルート。政府の調査では、米不足を契機に消費者が買い込みに走り、さらに業者による流通の目詰まりがあった。備蓄米が出回るには、今、少し時間がかかる”。高騰の原因は消費者の買い占め、流通の目詰まりにあり、米は足りていると。
 小泉農相が就任し、トーンが変わる。これまでの政府の米の需要予測が誤り。流通の目詰まりではなく、米そのものが不足している。足りない分を備蓄米や輸入米で補い、来年は増産に方針転換。
 原因は?インバウンドによる需要増?天候異変で予測より実際の取れ高が少ない?減反廃止の補助金制度等の維持?流通の多様化で在庫把握が困難等。いずれも十分な理由とは言えない。
 今般の米騒動は打ちこわし等が起きたわけではない。激しい諸物価高騰の中、主食が2倍に跳ね上がったために、生活の困窮が突然やってきた。かつて、米さえあれば生きることができた。その主食が高すぎる。都庁前には、かつてないほどフード難民が集う。定食屋のお替り自由や子供食堂への米供給がピンチ。庶民は、備蓄米に殺到。銘柄米は「2キロ入りのお米」を購入し、我慢。シングルマザーの子供らは夏休み、給食がなく菓子パン等、1日2食で凌いだ。実際、おにぎりは高くコンビニで昼食を賄うと700~800円もかかる。現代日本に、飢餓が到来か。
 政治は空転し、高市総理が誕生。本年の生産量は昨年を上回り、概ね順調と言う。十分に需要量に応えられるはず。だが、米価は高値のまま。物価対策は何一つ解決していない。
 新たな鈴木農相は、方向転換し、米作農家の経営維持のため、来年は減産を予定。米価は市場に任せるべきだからと言う。庶民には高値対策としてお米券を活用するようだ。根本解決にはほど遠い。米作農家は、ころころ変わる政策に振り回され価格が不安定なら、再生産の意欲も鈍る。
 備蓄米はやがて底をつき、隠れた「米騒動」は続く。