会報誌(DDKだより)

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1999年10月発行 第65号 DDKだより

巻頭言:大手銀行は合併の大合唱遠慮なく16行が1行に合併しろ

顧問  岩井 義照       
     祝経営研究所所長
     <近著>
     『倒産は必ず防げる』
     (東洋経済新報社)

  
 


 いま大手銀行は合併の大合唱である。まず興銀・富士・一勧の合併、巨大銀行の誕生だが大きいのは図体だけ。業務利益も、含み利益も粗利も少なく、文字通りジリ貧三兄弟の合併である。各行頭取は興銀は大企業に強く、富士は外国取引に強く、一勧はリテールに強いなどといっているが、とんでもない。興銀の取引先、長大重厚の大企業の大半が実質上赤字で貸付も不良債権化していること、富士のデリバティブは連戦連敗で取引先に押込み貸付したデリバティブ「エース」はいずれも延滞、争いが多発し抗議されている。一勧がリテール(地域取引・中小企業)に強いなど、中小企業が聞いたら噴飯ものだろう。強いのは貸し渋りだけだ。
 さらに驚くのが中央信託と三井信託の合併だ。これぞワーストブラザー、ブービーどうしの合併だ。マイナスとマイナスが合併すればマイナスの倍の倍だ。さらに東海・あさひ・横浜の合併、東京三菱・住友の合併も噂にのぼっている。こうなればもう理念も政策もない、ただ大きくなりたいだけだ。自民党の自自公と同じだ。始めに合併ありき、理念も政策もない。完全な野合だ。こうなったら銀行も遠慮するな。16行全部が合併して1行になったらどうか、これが本当の狙いだろう、これぞ究極の護送船団の復活だ。日本の銀行は戦後50年大蔵省に保護され競争もなく、利益まで保障されてきた。いま急に完全自由化だ。特色を生かして、自由に活動せよといわれても、同じ金太郎飴。特色などあるわけがない。ではなぜ大きくなりたいか、「赤信号みんなで渡れば怖くない」これだ。世界有数の巨大銀行群の誕生だ。どんなに不良債権があっても、業績が悪化しても潰せるわけがないという居直りだ。これはテロリストの核ジャックに似ている。核ジャックしたテロリストがマンハッタンのビルに立てこもって「攻めてみろ、爆発させるぞ」と脅かすようなものだ。こんな銀行に中小企業はなにも期待しない。