会報誌(DDKだより)

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2023年01月発行 第344号 DDKだより

金融・経営相談:贈与税の生前贈与加算が3年から7年に変更とは何か

Q.2023(令和5)年度の税制改正で贈与税について相続税の生前贈与加算が3年から7年に延びるということですが、具体的にはどんな影響がありますか。

今月の相談員
税理士 平石 共子

A.贈与税の申告をしたことはありますか。贈与税は暦年課税といって、1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた人が、翌年2月1日から3月15日までに申告納税するものです。ただし、1年間に贈与を受けた財産が110万円以下であれば申告の必要はありません。
 贈与税は110万円まで非課税ということは、ご存じの方も多いかもしれませんね。
 贈与税はそもそも相続税の補完税としての性格を持っています。相続税は亡くなった人が保有している財産に課税されるものですが、生前に相続する人(法定相続人)に財産をあげてしまえば相続税はかからないことになります。このように相続税を免れるための生前贈与に対して課税をしようというのが贈与税ということです。
 さて、暦年課税で、1年間110万円まで非課税ですから、たとえば現金110万円ずつ10年間贈与があったら、1100万円の財産が無税で移転することになります。
 そこで、今までは亡くなる前3年分は生前に贈与していても、相続財産に加えて相続税の計算をすることになっていました。この生前贈与の加算する期間を7年に延長するというのが今回の改正です。
 延長した期間の4年分については記録・管理の事務負担の軽減の観点から、受けた贈与のうち一定額については相続財産に加算しないということです。
 贈与は、贈与する人が贈与を受ける人と、「あげますよ」「もらいますよ」と互いに合意すれば、口頭でも成立しますが、贈与契約書を作成した方がよいでしょう。
 また、110万円以下であっても、備忘のために申告する人もいます。2021(令和3)年度は暦年贈与の申告は48万8千人でしたが、その内納税額がないのは10万3千人と国税庁の報告にあります。
 なお、夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から、生活費や教育費に充てるために必要な都度直接支払われるものについて贈与税はかかりません。また、法人から財産を贈与により取得した場合は贈与税ではなく所得税がかかります。
 最後に、生前贈与加算の対象となるのは法定相続人に対する贈与なので、法定相続人以外の人に対する贈与は影響ありません。