会報誌(DDKだより)

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2022年11月発行 第342号 DDKだより

年金相談:適用拡大にかかる老齢厚生年金の支給停止に関する経過措置

Q.中学卒業から長年勤務し、定年後は短時間の勤務をしていた男性従業員から、今般の適用拡大による社会保険加入を拒否されました。当社としてはどのような対応をしたらいいのでしょうか。


今月の相談員
特定社会保険労務士 服部 雅恵


A.令和4年10月1日、従業員数101人以上の企業に勤める短時間労働者に対し、下記条件にすべて当てはまる方は社会保険への加入が義務付けられました。
 (1)週所定労働時間20時間以上
 (2)月額賃金88,000円以上
 (3)学生でない
 社会保険への加入は本人の意思は関係なく、加入要件に当てはまる方は加入義務があります。社会保険への加入を望まないなら、加入要件に当てはまらない働き方に変更するしかありません。
 ただ、ご質問の男性従業員の方は44年以上の加入期間により定額部分が支給されていると推測します。老齢厚生年金を受給している65歳未満の方のうち44年以上厚生年金保険に加入されている方(長期加入者)と障害者特例に該当する方は報酬比例部分と定額部分が支給されています。ただし、この特例は「厚生年金保険の被保険者ではない」ことが要件となっています。今回の適用拡大により、上記条件に当てはまれば10月1日より厚生年金保険の被保険者となり長期加入者の特例要件から外れるため、今まで受給していた定額部分(加給年金額が加算されているときは加給年金額も含む)については支給されなくなります。
 このため適用拡大による定額部分の全額支給停止については経過措置が設けられ、令和4年9月30日以前から特別支給の老齢厚生年金の定額部分を受給している方で、同日以前から引き続き同じ事業所で働いている方が、10月1日から厚生年金保険に加入した場合は従業員ご本人が年金事務所に「障害者・長期加入者特例に係る老齢厚生年金在職支給停止一部解除届」を提出することで、引き続き定額部分の受給ができます。
 同様に10月1日から常時5人以上の従業員を雇用する士業の個人事業所の適用拡大及び短時間労働者の勤務要件撤廃により資格取得された方も対象となりますので忘れずに提出してください。なお、いずれの場合も令和4年10月1日付で資格を取得したことが要件になります。