会報誌(DDKだより)

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2022年11月発行 第342号 DDKだより

巻頭:リフォーム考


石田 仁

 コロナ禍で在宅率が高まり、自宅を隅々まで見直す時間ができたのか、近所のあちこちで作業シートに覆われた建物が目につく。都心にも、修繕中のマンションを見かけます。
 休日、自宅にネクタイを締めた各社工務店の営業マンがやって来る。真っ黒に日焼けし、首から身分証替わりの名刺をぶら提げています。彼等は異口同音に、「近くの××さんでリフォームが始まりますから、今なら足場費用が節約できますよ」、「壁に亀裂が入っていますし、屋根は、今修理しないと危険です」とモルタル壁のひび割れや落下しそうな屋根瓦を指さす。今ならお得だとか、放っておいたら危いとか我が家の弱点を巧みに指摘し、話しかけてきます。これが実に上手い。“瓦屋根は地震に弱く、金属のガルバリウム鋼板がいい”とご近所の写真付きパンフレットでダメ押しされると、ついついその気になります。当初からリフォーム業者を探していたのなら、この話に乗ってしまいそうだが、あわてると後悔するから一呼吸おいた。
 そんなことが何度もあり、屋根と風呂のリフォームを旧知の建築業者にお願いした。2度目になるが、居ながらの工事なのに、住みづらさを感じることもなく、手際よく施工してもらえた。築30年を超える古い家の屋根、ベランダ、お風呂がそれなりに蘇り、今のところとても快適に過ごしている。ベランダ塗装中、どこに洗濯モノを干すのか等わがままな願い事にも気軽に相談でき、つくづく知っている業者に頼んで良かった。
 かつて、白アリが大量発生したときは慌てたが、コツコツまめに手入れをしないと、家の傷みは一挙にやって来る。一時しのぎでは対応できず、新築かリフォームか迷った。これから新築して、30年も経過すれば、自分はもういません。それこそ、誰も住まない空き家になってしまう。昔のように子供は親の家に住み続けることはしない。結婚し独立すれば、たいてい自分の家を持ち、通勤通学に気に入った便利な場所に住む。
 もう一つ、新築は、時間とコストが大きい。仮住まいで、老犬の住み慣れた環境を変えてしまうのも気が進まない。要するにケチでもったいないだけかも。ならば、リフォームし、朽ち果てるまでこの家に住み尽くしてやろう。
 我が亡き後は、残った者たちが好きにすればいいと踏み出した所以です。