会報誌(DDKだより)

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2022年07月発行 第338号 DDKだより

おたくに任せて良かった


椎名 敬一

 皆さんは「スーパードライ生ジョッキ缶」をご存知だろうか。缶のふたを取ると泡がモコモコとせりあがってくる。きめ細かな泡がふくらむ様子に、飲む人はワクワクする。これからの暑い季節にぴったりだ。昨年の発売と同時にヒット商品になった。ところでこの泡が出る仕掛けだが、2つの技術が関係している(日本経済新聞 2021年8月3日)。 1. 缶を開けると自然に泡が出る「自然発泡」。2. 缶の飲み口の全面を開ける「フルオープン」。
 実は10年前からこの技術は存在していたが、製品への使い道が見えずお蔵入りになっていた。今から5年前、開発担当者は「とにかく新しいことをやってくれ」と命じられ、「店で飲むような泡立つ生ビールを家で飲む缶ビールでも実現できないか」と考えた。彼は、家で楽しそうに「泡立つ生ビールを飲み干す」「笑顔で集う」人々の喜ぶ姿を想像していたのではないだろうか。
 過去の技術を掘り起こし組み合わせ、試行錯誤と改良を重ねて商品化に至る。お蔵入りしていた技術に息を吹き込み蘇らせた。時はコロナ禍。業務用ビールの売り上げが大きく落ち込む中、家飲み需要はどんどん高まり、大ヒット商品となった。
 弊社は医療用キャビネットを製造販売している。30年、40年と使われる耐久財だ。ビールとは製品も顧客も異なるが、お使いくださる方々の「これいいね!」というご満足の笑顔を思いながら、製品を設計している。「ユーザーの笑顔」はモノ造りの原動力だ。
 弊社はカスタマイズ製品を多く製造している。ユーザーのご要望を伺いながら、様々な事柄に思いを巡らせ、造りこんでいく。そこに面白みがある。定型化されたカスタマイズ製品も多いが、ときには無理難題を要求されることもある。その難題の元は何かを突き詰めて、ご納得いただける解決策をご提案していく。
 そんなとき役に立つのは、今まで幾度となく試行錯誤してきた経験と知恵。そして蓄積してきたデータが味方となる。でもそこに固執はしない。ふとしたことでアイディアが降ってくる。不思議と道は開けるものだ。
 「おたくに任せて良かった」とお客様に喜んで頂けたときは心底ホッとする。ミッション完了。
 小さな業界だが、ここで「お役に立てる」仕事をさせて頂いていることに感謝している。