会報誌(DDKだより)

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2022年05月発行 第336号 DDKだより

巻頭:ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用


石田 仁

 ジョブ型雇用がかまびすしい。はじめから仕事ができない人は採用されない響きがあるので今後の雇用は大変なことになるとの心配もある。
 一般に、ジョブ型雇用とは欧米で圧倒的に普及している一定のジョブができる人を雇い入れる雇用制度。ジョブは職務記述書に詳しく記され、“この仕事はいくら”とジョブに値段がつく。他方、ほぼ日本でのみ採用されているメンバーシップ型雇用。会社の一員となる資格を得る意味合いが強い。新卒一括採用にみられるように、一定のジョブができる人ではなく、素人が採用される。学歴や偏差値からみえる潜在能力で採用する方式。言わば人に値段がつく。入社すればジョブローテーションやOJTで少しずつ仕事を覚え一人前に成長させていくやり方だ。
 給料は学歴や年齢を中心に考慮され、人事考課で能力を発揮できているとみなされれば等級が上り、給料が高まる職能給システムが多い。“みなす”のはあくまでも潜在能力である職務遂行能力。しかも、多くは、一旦上昇した能力は下がらない前提で運用されるから、よほどヘマをしない限り、給料は下がらないシステム。
 これは、メンバーシップ型雇用における賃金制度の「弱点」とされている。学卒で順調に育て上げた中高年「管理職」の賃金は、年功的に運用される職能給システムで、高額な人件費が必要となる。デジタル社会では、対応能力が低いとされる中高年からジョブ型雇用の考え方を適用し、各人のジョブに応じた賃金を支給すれば、効率が良くなり、会社の業績も向上する。そんな思惑からジョブ型雇用が主張される一面もある。急に、賃金制度を変えられても今後の生活設計に困る。彼等がそのジョブをこなせなければ、会社は、中途採用でそのジョブのできる人を採用。結果、彼等の活躍の場が減る。
 メンバーシップ型雇用それ自体は、定年まで面倒を見る日本型経営に立脚する多くの中小企業にマッチすると思うのだが、改善は急務である。
 ジョブに値段をつけるような欧米の雇用システムへの変更は容易ではない。今のシステムでもできることからやってみよう。就業前職業訓練や中高年の新技術・技能への教育もどんどん必要だろう。
 管理職の登用にあたっては、学歴、勤続、経験で順送りするのではなく、総合的な能力(△△や××の資格又は同程度の仕事ができる力)を見極めるようにする。まだまだ、やれることはある。