会報誌(DDKだより)

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1999年06月発行 第61号 DDKだより

巻頭言:総動員体制の再来を危惧

理事  亀井 賢伍       
       商工中金出身
       元第一経理相談室長
       前専務理事

  
 


勇んで軍需工場に
 「…吾等生を皇国に享け、この非常時局に際会し、未曾有の国難に直面するもの焉んぞ猛然として奮起し、一路救難に邁進せざるを得んや、この秋恰も吾等学徒に対し待望久しき勤労動員令は発令せられたり。…本日以降当工場に於て就業し軍需生産の一環を担当し、直ちに戦列に加わるを得たるは、無上の光栄にて…戦勝完遂の一助たらんことを深く期す。…」

 引用したのは、1944(S19)年11月、私たち広島二中の2年生が動員学徒として軍需工場に出動するに当り、読みあげた宣誓文です。
 その日から私たちは学徒動員の歌「あヽ紅の血は燃ゆる」に使命感をかきたてられながら、日曜日も休まず働きつづけました。
 “後につづけと兄の声/今こそ筆をなげうちて/勝利ゆるがぬ生産に/勇みたちたるつわものぞ/あヽ紅の血は燃ゆる”

総動員体制下の悲劇

 軍国少年の「憂国の至情」を当時の時代状況抜きで論ずるつもりはありません。
 半世紀も前の、晴れやらぬ体験を敢て記すには訳があります。
 一つは戦時体制下の教育・情報操作の魔力(危険性)を知って欲しいからです。宣誓文には教育効果が恐いほど現れています。
 二つは、さきに成立したガイドライン法(戦争法)に往時の再来の匂いを感じるからです。
 自治体や民間の強制動員と聞けば、何よりも同じ中学の一年生のほとんど全員が原爆死した建物疎開作業の悲劇を思わずにはおれません。

憲法とともに平和な21世紀を

 憲法も人間がつくるものであり、未来永劫いっさい改正はまかりならぬというものではありません。しかし歴史に逆行するような改悪や立法は許してはなりません。
 総動員体制の再来につながるガイドライン法の発動を阻み、21世紀に平和な世界をひきつぐことが若くして逝った後輩たちへの償いと、誓いを新たにしているこの頃です。