会報誌(DDKだより)

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2017年08月発行 第279号 DDKだより

巻頭:人口減少は必然でしょうか


河原 八洋

 7月の6、7日名古屋で中小企業家同友会の全国総会が1600名の参加で開催されました。
 この総会議案書「見通せない個人消費の回復」の欄に、厚労省の労働経済分析グラフが転載されていました。それは1995年から2014年20年間の労働者1人当たりの労働生産性と賃金の推移を「日本」「欧州」「米国」で比較したものです。労働生産性については、日本120%、欧州116%、米国126%の伸びで健闘している方だと思いましたが、賃金の伸びでは日本-2%、欧州110%、米国120%で日本のみマイナス成長です。この原因は賃金上昇の少ない非正規労働者が40%を占めている事によるものだと思います。
 異次元緩和やマイナス金利政策などアベノミクス3本の矢は不動産や株価を上げて、持っている人を潤しましたがトリクルダウンは確認されず、消費効果は一部に限られ、的外れの結果に成っています。米国や欧州では、金融政策の出口戦略が動き出していますが、日本では出口が見えない状態です。
 このところ人口減少が日本経済の足かせに成っていて、地方の衰退や社会的活力の減少が先進国の必然の様に言われていますが、このことは必然でしょうか。政策や制度、習慣を変えて、出生率2.0を達成したフランスの例を見れば、必然ではありません。出産年齢を見ますと、日本は25歳から35歳に集中していますがフランスでも25歳から35歳は多いのですが、20歳前後から40歳前までで、大きな偏りはありません。生む側に出産費用や、子育て、仕事と言った不安が少ないのだと思います。仕事も子育ても社会(政府)が100%面倒を見る様な社会に変えれば、必然のように言われている「人口減少」に歯止めがかかり活力が戻って来ます。これが本当の「成長戦略」だと思います。
 日本では子供6人に1人の家が貧困家庭だと言われています。子供の貧困率はOECD加盟34か国中24位です。ちなみにドイツは6位で韓国は11位、フランスは15位です(2011年調べ)。このほとんどがシングルマザーの家庭だそうです。この子供達が奨学金を頼りに大学に進学すれば、卒業までに500万を超す返済金に成り、大卒初任給の20倍以上に成ります。それでも奨学金受給者はこの20年で3倍に増えているそうです。英国では1997年から子供の貧困に取り組み、5年間で10%、110万人減らしたそうです(6/4NHK・子どもの未来)。
 少子化や人口減少を基にした政策では無く、未来を担う子供たちを「生みやすく」「育てやすい」社会構造に改革をして、3本の矢に代わる、みんなが身近に感じる事が出来る政策転換を望みたいものです。