会報誌(DDKだより)

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2016年08月発行 第267号 DDKだより

人事労務相談:労働組合のない小さな職場での労使協定とは?

Q.労働基準法では、いろんな場面で労使協定が登場しますが、当社のような労働組合のない小さな職場(社員5人)では、特に職制もなく、皆が同輩のように働いています。実際、労使協定の締結はどのようにしたらいいのでしょうか。

今月の相談員
経営コンサルタント
社会保険労務士 石田 仁

A.職場を代表して意見を述べてもらうことは労働条件の改善に向けての取り組みです。つい、社長が気心の知れた社員を呼び付け、秘密裏に協定の内容を十分説明することなく「君が社員代表として、この書類にサインして」と押し付けるのは適切ではありません。
 労使協定とは、会社と職場の社員の過半数代表者(過半数を組織する労働組合があればその代表者)との間で結ぶ取り決めのことを指しています。労基法では、労働条件に関する種々の内容決定に際し、過半数社員の代表と協定を結べば、会社に罰則を適用しないとする規定があります。例えば、三六協定(労基法第36条の時間外休日協定)を結び、所轄の労働基準監督署長に届け出ると、法定の1日8時間を超えて残業させても会社は罰せられません。労使協定の中には一斉休憩の例外や年休の計画付与などのように監督署長に届出の必要のないものもあります。しかし、協定当事者である過半数社員の代表者は公正に選出されなければならないし、会社も代表者になった社員に不利益な取扱をしてはならないこととなっています。
 代表を選出するのは、投票、挙手等によればいいので、必要以上に難しいことではありません。例えば、貴社のように社員が5人であれば、社長が朝礼等で「近いうちに、三六協定に必要な過半数代表者を選出しておいて下さい」と言えば済むのです。後で、社員にどういう方法で選出したのか確認すれば良いのです。その際、経営側に属する管理者(いわゆる労基法第41条第2号の管理者)には一票を投じる権利はありますが、過半数代表者にはなれません(労基法施行規則第6条の2、平11.3.31基発168号)。なお、前述のように、選出の際、気心の知れた幹部社員を会社が勝手に指名しては無効となりますので注意して下さい。
 労使協定の締結は日頃から社員の意見を聴き、労働条件の改善に活かす良い機会と考え、丁寧に実施しましょう。