会報誌(DDKだより)

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1998年11月発行 第54号 DDKだより

巻頭言:救うべきは中小企業であり、民衆である これにより銀行も救われる

顧問  岩井 義照       
     祝経営研究所所長
     近著『どんとこい銀行』
     (サンマーク出版)

  
 


 政府は「不良債権の処理を急ぎ銀行を救う」という。全く本末転倒の発想である。救うべきは過大な負債を負い、倒産の危機に立たされている膨大な中小企業であり、住宅ローンなどの重圧から、自己破産におびえている多数の民衆である。これらの「不良債権」が円滑に処理できれば、当然銀行も救われる。
 中小企業と個人の「不良債権」を救うためには、まず「不良債権」を正常化させれば良い。このため(1)不良債権(第四分類を除く)の元金回収を当面5年間棚上げし、この間の金利は年0.5%(公定歩合と同水準)ないし1%とする。公定歩合以上の金利を支払えば正常債権となる。大半の負債は1%程度の金利なら間違いなく支払可能である。ではなぜ払わないかというと中小企業などの金利が非常に高いため払いようがないからである。しかし払わなければ競売されてしまう。このため利息を払わず、最後の蓄財にはげむのである。しかし1%の金利なら充分支払可能であり、これは銀行にとっても十分採算可能な金利である。
 (2)5年後から元金の返済を始めるが全額ではない。借入れ10億円で購入した不動産の時価を3億円とする。損失は7億円である。この損失を債務者と銀行が折半して負担する。債務者は3億5千万円を15年で返済するのである。銀行の償却も15年間で行う。個人の住宅ローンについても同様とする。3千万円の住宅ローン負担者は当面5年間は金利年間30万円(月2万5千円)の支払いで足りる。5年後からの返済条件は、債務者の状況に応じて決めればよい。
 (3)以上により銀行の不良債権の大半が正常化されるので、各銀行は自己資本比率が達成でき、倒産の危機から救われる。また本案は原則的に自力返済であり、債務者と銀行の協力による不良債権の解決であるから公的資金の投入も大幅に減額される。本案は中小企業、個人への会社更正法ともいえる。政府が決断し、政令で命令すれば実現可能である。