会報誌(DDKだより)

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1998年09月発行 第52号 DDKだより

巻頭言:説明責任

専務理事  石田 仁       
     経営コンサルタント・社会保険労務士
     東京都中小企業家同友会理事
     同 専門家グループ部会幹事長
     東京都労働経済局 労働講座講師
     著書『就業規則で会社がかわる』
     (労働旬報社)ほか論文多数

  
 


 米国が爆弾テロにたいする反撃を口実に、スーダンとアフガニスタンにあるテロ組織の施設へミサイル報復攻撃をした。21日未明のことである。小渕首相はその日の国会で米国の行動は「理解」できると表明。通常なら「支持」が常套の政府の対応も今度ばかりは揺れたという。突然の行動だったからである。結局、同盟関係重視の姿勢を米国にアピールする「ギリギリの表現」として「理解」に落ち着いた(日経22日朝刊)。 野党やマスコミの論調は手厳しい。「攻撃判断の根拠としたのは諜報機関の情報と見られるが、その内容が十分に説明されたわけでもなく、米国の行動は突出した格好になった」と(同朝刊社説)。また、米国議会でも容疑者を拘束し、裁くというやり方では間に合わなかったのかの声もあがっているという。攻撃には、他国への主権侵害に対する配慮も国際社会を納得させうる最小限度の説明もなされてはいない。
 同日、小渕首相は金融危機に瀕している長銀支援のため公的資金投入を表明した。
 国民の非難をあびて成立した金融システム安定のための公的資金30兆円。 17兆円は預金者保護のため金融破綻処理に投入される。残りの13兆円は破綻していない金融機関の自己資本増強に充てられることになっている。貸し渋りを解消させるためである。だが注入された都市銀行等21行への 1兆8千億円の公的資金ではいっこうに改善されず、逆にますます強まっている。
 事態はもっと深刻である。公的資金の13兆円部分は「経営に失敗した個別の金融機関の救済のために」使われるものではないからだ(大蔵省パンフ)。今、その舌の根も乾かないうちに長銀救済のための公的資金投入に政府自らが乗り出した。一般企業や中小の金融機関の経営の失敗は市場で淘汰されるのに。大義は個別銀行をつぶさないことではなく、大手行が担う金融システムの中核としての役割を維持することにあるという。だが長銀が債務超過ならば破綻銀行に公的資金を投入することは、国民を欺く背任行為である。
 十分な説明をせず、政府、日銀が全面支援を約束するのはいかがなものか。国会で議論沸騰すること必至であろう。クリントン大統領も小渕首相も国民や世論に説明責任を負っている。