会報誌(DDKだより)

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2012年10月発行 第221号 DDKだより

巻頭言:仰げば尊し




亀井 賢伍

子供のいじめ問題を契機に、学校や教師のあり方が問われています。自分なりの考えはありますが、ここでは自身の見聞・体験を述べることとします。

およそ60年前、故郷の農村の住民向け「夏期大学」で聴いた森戸辰男氏(当時広島大学長)の講話。小学生のお孫さんが、文部大臣もやった、おじいちゃんより、担任の先生の方が「正しい」と思い込んでいる話をされました。苦笑いされながらも満足の表情でした。教師の影響力の大きさ、それ故、教師の自覚、同時に暗に親の自省を促されたのでした。

1954年大学を卒業する時のこと。当時学長は著名な憲法学者田畑忍先生でした。経済学部の3名で、先生をお招きしたところ、快く、むさくるしい下宿の一室に来てお話ししてくださいました。私たちは学部も違い、ゼミ生でもない一介の学生です。今考えると何と無謀な、と冷汗三斗の思いです。話の中身はよく覚えていませんが、その後の生き方に影響がない筈がありません。

商工中金に就職してしばらく経ったある日、勤務していた広島支店に、卒業した高校のM校長が、支店長を訪ねて来られました。先生は、私が在学中(編入で1年間だけ在籍)は教頭でした。まして卒業後4年以上も経っており、就職先も伝えてはいません。それなのに4年前の卒業生のため「挨拶」に足を運ばれたのでした。

時は移り世態人情も大きく変わりました。求められる教師像も変化し、かつ多様化しています。されど、師道に通底するものがあるよう思い敢えて古風な標題を付し昔語りをした次第です。