会報誌(DDKだより)

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2011年02月発行 第201号 DDKだより

巻頭言:タイガーマスク運動と無縁社会


亀井 賢伍

昨年初め「無縁社会」がNHKテレビでとりあげられ人々を慄然とさせました。暮れにはこの索漠たる言葉が流行語大賞に選ばれ暗い気分になりました。一方、昨年のクリスマスプレゼントに端を発したタイガーマスク現象は年明けから全国に波及し運動と呼ばれるまでに至っています。お正月にふさわしい明るいニュースで多くの人に希望を与えました。
こころの豊かさ、善意は市井のなかにどっこい生きていることを再確認でき明るい気分になりました。失われつつあるとみられた縁・絆も取り戻せる、コミュニティーの再興も不可能ではない、と意をつよくしました。
 
贈り主の思いはさまざまでしょうが、察するに、児童虐待、育児放棄、格差など昨今の荒涼たる光景が背景にあるよう思います。未来を担う子どもたちへの切なる期待もうかがえます。まさに「最小不幸社会を目指す」庶民の不言実行です。発端が児童へのランドセルという訴求力の強い形だったこともあり一挙に運動が広がりましたが、もともと他人や社会に役立つ行動をしたいと思う人は66%、このうち困っている人を助けたい人が42%にも及ぶといいますから素地はあったといえます。助け合い精神の復興運動につながることを切望します。
 
政治・行政は、安易に個人の自己責任に転嫁せず、また濫りに「民」に丸投げすることなくNPO法人への寄付を促す税制など善意を生かす仕組みづくりに努めていただきたい。もとよりニーズにあった福祉の充実に一層力を注ぐことの緊要性は言うまでもありません。