会報誌(DDKだより)

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2010年12月発行 第199号 DDKだより

巻頭言:尖閣ビデオの流失は内部告発か



河原 八洋

当社の新築部門では月曜に朝礼を行い、社員が毎週順番で3分間スピーチをしている。11月初めだったと思うが、当番だった新入社員の女子が尖閣ビデオの流失事件について『見れて良かった、どちらが悪いかはっきりした』と話した。
私は朝礼の場で、このデリケートな外交問題を、取り上げ話した女子社員に驚くと同時に頼もしく思った。
私は「ビデオを見た日本国民は『中国漁船』の悪さに納得するだろうけれども中国国内では『捏造されたビデオ』と宣伝され、残念ながら問題の解決にはならない」と簡単にコメントしたが、その後いろいろな問題に気付いた。
まず流失したビデオは、海保が手を加えて、一部分を教育用に編集したものであり、捏造の論拠になる。たとえ、全部を公開しても、1党独裁の政治体制をとり、法体系も違い、尖閣も自国の領土と主張する中国には決定打とならない。
次にこの流失は内部告発か、という点である。
これは雪印や船場吉兆などの違法行為の内部告発とは違う。政府は『中国漁船が日本の領海内で巡視船にぶつかって来た』と発表しており、それに誤りは無い。さらに重要なことは、流失者は国家公務員であり、所属する海上保安庁は何年か前の不審船銃撃戦でも分かるように、武力を装備している組織である点である。今回は1人であるが、このような組織が指示に反して、正義を振りかざして動けばクーデターになる。また真実の公開を叫び、担当大臣の罷免を要求している自民党は、『沖縄問題に密約は無い』と言い続けて、地裁で敗訴したにも拘らず、何の謝罪も責任も取っていない。
戦争での戦利品は昔から領土である。中国もロシアもこの時期動くのは、政権交代で日本が混乱していると見ているからに違いない。企業は困難な局面に当れば『全社員一丸となって』その局面を乗り越えなければ、倒産してしまう。国もそのように考えられないものだろうか。
私事だが、7年前に出版され、この欄でも紹介した『武士の家計簿』が松竹で12月4日から公開される。主人公の父、猪山信之(中村雅俊)から数えて私は男系6代目に当る。貧乏な加賀藩下級武士の話だが御覧下されたし。