会報誌(DDKだより)

DDK Newsletter

2009年11月発行 第186号 DDKだより

金融・経営相談:「借入金の返済猶予制度」の利用に備えて

Q.政府は債務の返済猶予制度を盛り込んだ「中小企業金融円滑化法案」(仮称)を近々提出すると報道されています。売上の低迷が続いており、当社にとっては朗報です。検討されている制度の概要解説と、施行後この制度をいち早く活用するために、どのような準備をしておいたらよいか助言をください。

今月の相談員
中小企業診断士
中小企業組合士 伊藤 勝

A. 現在創設が検討されている「新制度」は、報道によると次のような概要となっています。
①借り手の対象:中小・零細企業、個人(住宅ローン)。
②貸し手の対象:銀行や信用金庫などの預金取扱金融機関。
③返済猶予の期間:最長3年程度の返済猶予。
④条件変更の内容(返済条件緩和):債務の返済猶予、金利の減免、返済期限の延長、など。
⑤金融機関の損失に対する政府保証:公的な保証制度を新設(4割保証)。
⑥金融機関に対する義務:借り手の求めに応じて可能な限り対応する「努力義務」と取扱実績の金融庁への報告義務(罰則規定有り)が課せられます。
昨秋から金融庁が検査マニュアルを改定し返済条件緩和のための対策を行っています(DDKだより「2009年6月号参照下さい」)が、メガバンクは消極的な対応でさらに貸し渋りをも強めています。細目決定までにはまだ間がありますが、中小企業の資金繰りが厳しさを増していることから、国の更なる支援が必要とされています。
新制度では、借り手の申込みに対し銀行は努力義務しか課せられない予定です。さらに、政府の保証も小さく、金融機関の審査は慎重になることが予想されます。本制度の利用を希望する場合は、今から以下の準備をしておきましょう。
◇3年程度の返済猶予(元本のみ)を想定し、銀行に実情を理解してもらい協力を要請する資料の作成。
1)現在から3年間の(年別)資金計画(中期的な資金繰り)を作成する。
①先ず、年間の金融機関への約定返済額を把握、②元本のみ返済猶予してもらった場合の効果がどうなるかを算定。・・・売上げや利益の動向、固定費削減努力を織り込む。
2)3年後から5年後の業績回復へのシナリオを作成する。
今後の収益性向上のため、計画的に取組む具体策を練る(返済財源を確保するには、利益アップが重要)。
例えば、「人件費・役員報酬の削減」、「経費節減」など合理化策。
借入金の返済が可能となる売上高や利益増加のための経営改善計画を示す。
銀行交渉のための大事な資料作成に当たっては税理士さんなどともよく相談して準備しましょう。