会報誌(DDKだより)

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2009年09月発行 第184号 DDKだより

金融・経営相談:信金・信組は農林中金の間違いをくりかえすな

Q.最近、政府が信用金庫と信用組合について新しい政策を打ち出したそうですが、どんな内容ですか。


今月の相談員
田口 良一

A.金融庁の諮問機関・金融審議会の下に設置された「協同組織金融機関のあり方に関するワーキング・グループ(WG)」が「中間論点整理報告書」を発表しました。
 これが設置されたそもそもは、信金・信組の規制(保護)を緩和して、株式会社(銀行)と同じ取扱いにしようというものです。
ところが、このWGが発足(08年3月)した直後(08年9月)、世界金融恐慌が勃発し、米国自身が規制強化に転じたので、WGはハシゴをはずされてしまったのです。
おかげでこの報告書の結論はマイルドになったと、業界ではホッとした空気に包まれているそうです。
しかし、これはことの一面でしかありません。金融庁の腹の内は変わっていません。その狙いは、信金・信組を「JAバンク・システム」と同じ機構に再編成しようというものです。農協の貯金を根こそぎ農林中金に吸い上げて、農中が一括して運用し、利益を農協に還元する、これがJAバンク・システムです。農中の運用先の大部分は米国で、日本最大の機関投資家といわれています。
信金・信組は預貸率(総預金に対する総貸付の比率)の悪化に苦しんでいます。「信金中金」を農林中金なみに法制上、上部機構として強化して預金を集中させよう、というものです。
農中は今回の世界危機で大損してしまい、穴うめのため1兆9千億円の増資を農協に強制的に割り当てたのです(信金中金も同じ事情から2千億円を増資したが、出資拒否する信金もあった)。
信金・信組のユーザーには縁遠い話だと思わないでください。地域のため、会員相互扶助のために運用すべき資金を海外に流出させることは、中小企業と地域経済を農業がたどったと同じ途に連れ込むことなのです。