会報誌(DDKだより)

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2009年09月発行 第184号 DDKだより

巻頭言:価格破壊は自己破壊、消費者破壊につながる


平石 共子

ワンコイン(500円)弁当がデパートに登場したと思っていたら、東京下町の商店街では200円弁当が売られているという。価格破壊という言葉が登場したときには素直に歓迎した。しかし、それは限界への挑戦を評価したわけではない。例えばビールが「第3のビール」にすることで半額近い価格になったのは工夫があったからである。まさに、新しい商品を開発しているのと同じだと思う。
同じものを安く作るとしたら、材料費を下げる、人件費を下げる、間接費を徹底的に絞るということになる。その典型例が日本より安い人件費を求めて中国やベトナムでの生産となる。もちろん材料は日本のものは使わない。これは食料自給率が40%になっている構造と基本的には同じではないかと思う。
お弁当の価格は、材料を海外にすれば人件費は国内であってもかなり抑えることになるだろう。つまり、低価格を実現することは、必ずしも安心安全な材料の保証はなく、働く人の労働の対価を犠牲にしている可能性が大である。
もう一つ気になるのが、ポイント、クーポン、マイレージ等、将来の値引きや情報を持っている人に対するサービスの横行である。ポイントを使って無料でモノを手に入れ、サービスを受けると得をした気持ちになる。しかし、消費を過剰にしてはいないのか、その値引きはどこかに付けが回っているのではないかという問題がある。消費者間での格差やそもそも定価設定に将来値引き分が織り込まれているのである。消費行動は価格のみで決まるものではないと思うが、企業側は消費者心理をついた仕組みをどんどん考え提供してくる。
ところで、「無買デー」という運動をご存知だろうか。年に1日だけ不必要なものを買わないようにして、消費について考えようという取り組みだ。日本では11月の最終土曜日(今年は11月28日)で、すでに10回目になるという。
供給する企業サイドは買ってもらわなければ困るだろうが、価格だけではない判断基準の提示もあるべきであろう。真に消費者に支持されるモノやサービスの提供こそが、国内の材料を大事にし、働く人を大事にする経営につながると思う。
過剰消費を抑えれば環境問題にも貢献するのである。