会報誌(DDKだより)

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2009年06月発行 第181号 DDKだより

金融・経営相談:返済条件の緩和をおこなっても、不良債権にはならない

Q.銀行に長期借入金の返済猶予を要請しました。ところが、「返済条件の緩和をすると会社の評価が悪くなる」と銀行にいわれ困っています。なぜ銀行は要請に応じてくれないのでしょうか、本当に不良債権になるのでしょうか。

今月の相談員
中小企業診断士
中小企業組合士 伊藤 勝


A. 銀行が貴社の要請に素直に応じないのは、債務者区分がランクダウンする懸念があり貸倒引当金をさらに積み増す必要がでてくるためです。
銀行融資は、金融庁の金融検査マニュアルにそって行われています。その検査マニュアルでは、融資先を正常先~破綻先までに区分(*1)し、それぞれに対応した貸倒引当金を積むことを銀行に求めています。
銀行はサブプライム問題等の影響により、不良債権処理の増大と保有有価証券評価損発生で自己資本比率の低下に陥っています。銀行は一定の自己資本比率死守を目指し、不良債権が増大しないよう中小零細企業への貸し渋りや貸し剥がし、大幅な返済条件の緩和を渋っています。不良債権先に判定をされた企業は、プロパー追加融資もままならないどころか、今般の緊急保証融資も利用できないケースもよく耳にします。
《昨年11月より、中小向け貸付金の返済条件緩和がしやすくなりました》
実は、まだよく知られていないようですが、金融検査マニュアル(中小企業編)の改定(平成20年11月7日)により、「金融機関が条件緩和を行っても、不良債権にならない取扱いの拡充」がはかられました。
(以下、ポイントを紹介)
「貸出条件緩和債権(*2)」であっても、①経営改善の見込みがあれば、不良債権にはならない。②経営が健全化するまでの許容期間が5年に延長され、実現性の高い計画策定ができる。③緻密な「計画」が作成されていなくても、例えば、「経費の削減予定」、「売上が増加する見通し」などシナリオが説明できれば良い。
貴社の場合、銀行がどうのように区分しているかわかりませんが、分類がもし「要注意先」にとどまれば、銀行は数%の「引当率」で済むので、取り引きしやすくなるはずです。
そうなれば、利息だけの支払で元金返済猶予も可能となり、新たな借入がなくとも実質的な資金繰り支援になります。5年先を見据えた健全化計画を説明すれば銀行も納得するはずです。
*1) 銀行の自己査定による6つの債務者区分と標準的貸倒れ引当率【( )は、引当率】
① 正常先(1%以下) ②要注意先(3~5%)③要管理先(15%) ④破綻懸念先(50~70%) ⑤実質破綻先(100%) ⑥破綻先(100%)
 このうち、不良債権と判定されているのは、③~⑥で、銀行は15%程度~100%の貸倒引当金を積む必要がある。

(*2)「貸出条件緩和債権」とは
「債務者の経営再建又は支援を図ることを目的として、金利の減免、利息支払猶予、元本の返済猶予、債権放棄その他債務者に有利となる取決めをおこなった貸出金」