会報誌(DDKだより)

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2009年06月発行 第181号 DDKだより

巻頭言:遺物と「遺産」



亀井 賢伍


40数年前に同じ職場で働いた友人と先月山中湖畔に一泊し語り明かしました。原水爆禁止運動が分裂し、ビキニ水爆実験の犠牲者久保山さんの墓前祭も統一して開けなくなった時期から数年間、静岡でともに過ごした3人です。いまは皆 年金暮らしですが被爆、引揚の体験者もいて平和への希求は衰えていません。10歳のとき旧満州で敗戦を迎え翌年帰国したKさんは「遥かなる絆」(NHKドラマ)は他人事とは思えないと述懐していました。敗戦時の混乱、侵攻兵士の狼藉の様子もリアルに知り衝撃をうけました。

話題はいつしかオバマ大統領のプラハでの核廃絶演説に及び熱が上がりました。戦争終結を早め、犠牲を少なくした、その後も抑止力として機能を果たしているとして信奉されていた核兵器を、唯一の核兵器使用国の大統領が「最も危険な遺物」と言い切りました。そして道義的責任を初めて口にしました。諸国民の運動の成果です。唯一の被爆国であり、原爆の惨禍の中から生まれた尊い「遺産」である憲法9条も持つ国の政府・国民の出番です。言われていた理想(憲法)と現実との乖離が一挙に縮まりました。「核の傘」は論拠を失いました。遺物を廃棄し「遺産」を守り輝かせるときです。
歴史における個人の役割や、プラハについての各人の並でない思い入れにも話は広がりましたが、結局、歴史の主体である我々が「核戦争起こすな、核兵器なくせ」「憲法9条を守り活かせ」の声をたゆまずあげ続けることが大切だと納得してお開きとしました。