会報誌(DDKだより)

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2009年05月発行 第180号 DDKだより

巻頭言:『迫りくる世界不況、これはピンチかチャンスか?』


河原 八洋

100年に1度と言われる大不況の中にあって、東京中小企業家同友会は今年の定時総会の後、恒例になっている懇親会を止め、参加者全員による大討論会を行った。このテーマで2時間の討論が行われ、参加者は経営者を中心に200人でした。
討論に先立ち、朝日新聞の山田厚史元編集委員から問題提起を受けた。
氏は今回の世界不況の原因を、アメリカ最大の産業である金融業界にお金が回らなくなった事によるものだと言い、この現象は『きわめて大きな正常化現象』だと定義付けた。
長年アメリカに依存してきた日本ではGDPはマイナス10%程度の覚悟が必要と分析した。この正常化の中心に位置しなければならない分野は『医療、育児、教育、介護、環境』など今まで貧しかった分野が中心になっていく。そして、我々中小企業は、大手のピラミッドの中で全生命をかけず、非価格競争力を持つ事が大切と説いた。
これを受け、参加者が27グループに分かれ、同じ場所、同じテーマで討論が始まった。最初、参加者からは受注や売り上げが極端に低下している現状が報告され、「今打てる有効な手当てがない」とのムードに包まれた。絶望的と思われたが、討論が進むにつれ『今やれる事は何か』『今だからやらなくてはならない事は何か』と、企業の継続を前提にした取り組みへの探求が始まった。『自社の体質改善』『下請けからの脱却』『営業ルートの拡大』『社員教育』『新戦力の採用』取り組むべき課題が次々と出て、熱気に包まれたムードに一変した。
後日発表された、グループ討論の報告の中に、『花の咲かない冬の日は、下へ下へと根を伸ばせ』という今回の討論会を象徴するような発言が掲載されてあった。最後のまとめに、山田さんは『中小企業の経営者は、命と引き換えに仕事をしているから、大企業に無い力強さがある』といわれた。同感である。
我々はいかなる環境においても『時代の変化に対応して経営を維持して発展させる責任がある』と考えている。
大企業から中小企業が中心になる国家へ、外需から内需中心の経済へ変換してこそ『正常化』ではないだろうか。