会報誌(DDKだより)

DDK Newsletter

2009年03月発行 第178号 DDKだより

巻頭言:みんなの幸せのためのワークシェアリング


石田 仁

仕事柄、ハローワークへ出かける事が多い。8時30分のオープン前から、相当な人出がある。最近は外国人労働者もちらほら見かける。老若男女もすべからく、仕事にありつけないのである。
報道によれば、昨年12月の失業者は一昨年より39万人多い270万人。世界的な金融危機・大恐慌の影響で、中小製造業の売上減少もその8割に及んでいる。そのため、人材は過剰気味で求人は圧倒的に少ない。会員さんからも、人手が余っているとの声が多い。
そこで、耳にするのがワークシェアリング。とくに、自動車や家電、半導体関連の製造業では中小企業といえども就労日を減らし、就業時間を短くしているのが実情。今いる社員の雇用を、正非社員にかかわらず、何とか維持するのが精一杯である。当然、社員に賃下げの協力もお願いしている。これがいわゆるワークシェアリングと称されている。緊急避難措置としての時短で、雇用を維持する。日本的経営の良さや強さはこういう面で発揮される。中小企業では、社員は仲間であり家族である、そういう情の発露と思う。
しかし、これだけでは不充分であろう。おっぽり出された労働者を雇用するためには、かなりハードルの高い視点が必要とされる。個人や個別企業の幸せだけでなく、安心できる世の中のためにワークシェアが必要だからである。そのためには、企業は自分たちの利益を少しは供出し、社員も自分たちの給料を一部削る決意をしなくてはならないからである。これがいわゆる「雇用創出型」のワークシェアリングである。国や自治体が短期的、緊急避難的に雇い入れるのも雇用創出型に違いないが、予算措置は立派でも、ハードルが高い訳ではない。その証拠に自治体が求人しても人が集まらないのである。理由は、ウルトラ短期の雇用であること、時給が恐ろしく安いことである。
中小企業も含め、みんなの幸せのためのワークシェアリングが可能となるには、①均等待遇の保障、②最低賃金の底上げ、③社会保障や税制のバックアップ等の改善がなされなくては実現できない。いつまでも、2階から見下ろすようなワークシェア議論では、この大不況は乗り越えられない。