会報誌(DDKだより)

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2008年08月発行 第171号 DDKだより

金融・経営相談:せまりくる21世紀型不況への備えは?

Q.不況色が強まり、中小企業が又、受難の時代到来と言われていますが、どのような備えが必要でしょうか?

今月の相談員
田口 良一


A.わずか数か国で地球の運命を仕切った時代は終わり、かつて経験したことのないスタグフレーションに突入しつつあります。仕入れ・原料高(インフレ)と販売・製品安(デフレ)の並存が長期化する不況です。
02年を底にして現在まで続いている「好況」のおかげで、上場企業の4割は無借金となり、借入金依存度(注1)も、40%台から28%にまで低下しました(日経新聞6/25)。
これとは対照的に、中小企業では借入金依存度は、59.0%(03年)、59.5%(04年)、60.4%(05年)とむしろ悪化気味で、相変わらず金融機関による管理が続けられています(注2)。
そして、時代は、大量消費型からモノを大切にするライフスタイルに向かって、大変動、大不況に向かいます。でもひるんではいられません。発想を変えればこの困難は、中小企業が得意とする安心・満足が輝く出番ともいえます。
同時に、中小企業全体のためのライフラインも補強される必要があります。
例えば、①中小企業基本法は大きく変えられてしまいました。大企業と中小企業の間の格差は消滅した、存在するのは多様性としての大・小だけだ、というのが今の中企法の立場です。ここからは中小企業対策の一路後退があるのみです。
②日銀の「短期経済観測」が対象とする中小企業とは、資本金2,000万円以上1億円未満であり、圧倒的マジョリティたる2,000万円未満は、経済・景気政策の対象外です。
③政策金融のライフラインも、小泉・竹中改革でズタズタにされてしまいました。保証協会は部分保証制に変えられたし、国民公庫や中小公庫は統合のうえ、株式会社となり、「もうかる政策金融機関」へと追い込まれます。
これらの3点は嵐が強まる前に、原点に立ちかえって見直し、ゆがみを正し、政策機能再生をはかる必要があります。
迫りくる暴風雨を前にして、各社とも全知全能をかたむけて生き抜きましょう。
(注1)
借入依存度=長期・短期有利子負債÷総資本
(注2)
・中小企業庁:「中小企業財務指標」平成19年度版
・中小企業庁は平成13年から大がかりな調査を開始。平成17年分が最新版。
・保証協会は、この「指標」を活用して、保証料率(9本建て)を査定する。