会報誌(DDKだより)

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1998年02月発行 第45号 DDKだより

巻頭言:貸し渋りと返し渋り

理事  亀井 賢伍       
     商工中金出身
     元第一経理経営相談室長
            


 銀行の貸し渋り・回収強化が大きな問題となっています。企業経営にとってだけでなく、経済への悪影響(金融デフレ)も出ています。さらに社会問題にもなっております。
 直接の原因は、いわれているように大蔵省の「早期是正措置」です。昨年の消費税増税、特別減税廃止、医療費負担増の財政デフレ策に次ぐ失政です。
 当の銀行も、この措置を楯に、公共的責任を放棄し、自行の資産構成是正、競争力強化をめざして、常軌を逸した貸し渋り・回収強化を行っています。
 銀行全体で、GDPの6%もの資金が回収されようとしています。バブル時、提案融資と称して押しつけ融資に狂奔したのと、方向は逆ですが、体質は変わっていません。慌てた当局が緩和措置をとりましたが勢いはいっこうにおさまりません。
 先日、日経新聞に某大手企業社長の「自衛のために返し渋りも辞さず」という主旨の発言が紹介されていました。社員とその家族を路頭に迷わさない、株主、得意先、ユーザー(消費者)、地域社会など関係者(ステークホルダー)に迷惑をかけないの一念で、渾身の力で経営に当たっている社長として「銀行借入返済(回収)のため、会社を潰すわけにはいかない」のは当然です。この迫力・頼もしさが会社を守り抜くのです。
 何も踏み倒すわけではないのです。いまは返せない、いま返す(回収される)と会社が立ち行かなくなるから猶予してくれといっているのです。それに耳を貸さず回収を迫るなら、返し渋りで自衛するほかありません。そうすることが自社の生き残り策であると同時にマクロ的にも景気のさらなる悪化を防ぐ経済的効果をもつのです。
 銀行のいうことを唯唯諾諾と聞き入れてさえおれば助けてもらえるとの考えは、いまは通用しません。