会報誌(DDKだより)

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2008年07月発行 第170号 DDKだより

巻頭言:銀行から資本金を借りるな


岩井 義照


私の持論は“企業は大きくするな”ということである。大きくすれば当然経営者の目が届かない。結局無理して新店舗など出せば殆んど失敗する。
しかも“大きくする”ことはもっと大きな危険がある。結局、新規の固定資産を銀行の借入に依存せざるを得ないからである。本来固定資産は増資で賄わなければならない。増資なら返済の義務がない。しかし中小企業の増資は事実上不可能である。結局、銀行借入に頼らざるを得ない。しかし以前は不動産の借入資金は20年~25年返済の貸付もあったが、今では最長でも10年である。貸付をすれば赤字でも当然利息は回収できる。更に返済が悪化すれば、貸し渋りにより企業を倒産に追い込み、担保物権を売却して回収することができるからである。
この不況下に利益を出しつづけ、税金を払い、残りの利益金で資本金の借入額を10年以内に返済するなど、今の景気のもとでは不可能なことである。こんな危険な借入はない。しかし銀行は企業の業績が良いと積極的に設備資金を貸すし、経営者も安易にこれを受け入れる。しかし返済が行き詰れば不動産は売却され経営が行き詰る。安易に大きくするということは、こうした最大のリスクを負うということである。不況下の経営は、ともかく守りを固めることである。人材を育て、お客様に信頼される良い会社を目指すことである。
借入は原則として短期の運転資金に限定すべきである。しかもいま銀行は大きく変貌している。業績悪化の企業からは一斉に手を引き始めている。また貸し渋りが始まっているのだ。今後は企業側も手形支払を止めるとか、注文を受けたときの仕入資金を銀行に頼るのではなく、困難でも買掛先・下請先と協力して、各社の負担で納品する。製造業なども資材を各社が持ち寄る。売掛金を回収して各社に分配する。こうした方向に努力して欲しい。
そく行うのは不可能だと考える人が多いが、戦前の中小企業はすべてこうしたシステムだったのである。