会報誌(DDKだより)

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2007年12月発行 第163号 DDKだより

巻頭言:打てば響く経営

河原 八洋


最近若者の会話から【KY】と言う言葉を聞く事がある。これは【空気が読めない】と略すそうだ。
 しかしこの略語【KY】は建設現場では昔から使われてきた重要な標語であるが、意味が違う。建設現場は、改善されてきたとはいえ、今だに危険が多く潜む作業環境にある。足場の上での作業や重量物の運搬、その時々の気象変動、使用する電動工具などまかり間違えれば大きな災害に繋がる。そこで現場では、毎朝一同に集まって朝礼を行い、その日の作業を報告しあう。その後自分の持ち場に移動して、グループで今日行う作業の注意点などを話し合ってから作業に取り掛かる。
 これが現場の【KY】=危険予知の訓練である。潜んでいる危険を予知する感性を研ぎ澄ます訓練なのだ。
 先日社員旅行で和倉温泉【加賀屋】に泊まった。社員会が沖縄旅行を計画していたのを、地震災害の復興支援名目で能登旅行に変更させたのだ。夕方5時ころ加賀屋に着いた。加賀屋は満室だった。出迎えの仲居さん達に混じって、加賀屋の若女将【小田真由美さん】が出迎えてくれた。エレベーターに乗るまでほんの20mの間話をした。沖縄旅行の件も話して別れた。部屋は12階の七尾湾から能登島が見えるいい部屋だった。程なく抹茶のサービスがあり、浴衣に着替えているとフロントマンがやって来て、若女将が「18階のスイートルームに移ってほしい」と言っているとの事だった。スイートルームの上の階は「現天皇や昭和天皇」がお泊りになった部屋だ。遠慮をしたが聞かないので移って二次会もこの部屋でさせてもらった。翌日帰るまでこのサービスは一貫していた。沖縄を和倉に変えた事が心を打ったのかもしれないが、ほんの1~2分の客との会話の中から一瞬のうちに読み取った相手の心と、その後の対応には舌を巻いた。
 朝から晩まで客のもてなしを考え、感性を研ぎ澄ましてきたから思い立った考えだろう。マニュアルをいくら重ねても瞬時にこの発想は出ない。
 今回この【打てば響くサービス】から大きな学びを頂いた。