会報誌(DDKだより)

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2007年07月発行 第159号 DDKだより

金融・経営相談:1年以内の短期前払費用は要件に該当すれば支払ったときの損金となる

Q.前払費用であっても一定の要件に該当すれば、その支払った事業年度の損金になるということですが、具体的にはどのような場合か教えてください。


今月の相談員
税理士 平石 共子


A.原則として、法人税法では販売費及び一般管理費その他の費用については、その事業年度の期間に対応して損金になるという規定になっています。3月決算の法人の場合は、4月1日から3月31日までの1年間にかかる費用ということになります。ところが、現実には1年分を一括して前払いする場合があります。
 例えば、3月決算法人が、火災保険料を(1月1日から12月31日の契約期間)1年分を一括で前払いしたケースで考えてみましょう。原則からいえば、1月から3月までの3か月分は当期の期間に対応する費用で、4月から12月までの9か月分は翌事業年度の期間に対応するため前払費用となります。
 しかし、法人税の取り扱いでは、「法人が、前払費用の額でその支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合に、継続してその支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているときは、これを認める」としています。
 つまり、この火災保険料の場合、会社が支払ったときに「支払保険料」として経理上、費用として処理すれば、法人税の計算でも同様に損金として考えるというものです。
 ここでのキーワードは、「1年以内に提供を受ける役務に係るもの」です。具体的には、土地・建物等の賃借料、工業所有権の使用料、保険料、借入金利子、手形割引料、信用保証料、ロイヤリティなどがあげられます。
 気をつけなければならないのは、一定の時期に特定のサービスを受けるためにあらかじめ支払った前払い給料や物の購入や生産に対する対価の前払い分(例えば外注費の前払いなど)は、ここでいう前払費用の適用は受けられません。
 また、1年を超える期間分、例えば2年分を一括で支払った場合には、事業年度の期間に対応して、費用と前払分に区分します。支払ったということで支払い金額が確定していること、そして1年以内というのは、近いうちに費用になるのだからということで、重要性の観点から許容されていると理解できます。
 決算対策として、期末に1年分の保険料や家賃の一括払いが有効となりますが、契約に基づき、実際に支払うことがポイントです。