会報誌(DDKだより)

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2006年09月発行 第148号 DDKだより

巻頭言:自治体は会社にあらず、人が暮らす場である

専務理事 石田 仁


 私の田舎はセトモノの瀬戸市の山奥にある。高度成長期の頃、工場から垂れ流される汚泥により白濁し、ドブ川と称していた町の中心を流れる“せと川”も今では、すっかり浄化が進み、水鳥や魚が戻っている。青い空、緑の山と、人が暮らすには最適の環境がそろっているように見える。だが、産業に目をやると、様相は一変する。地場の陶磁器産業は輸出不振でその盛りを過ぎ、数年前にバタバタ倒産した。今や、斜陽の地場産業。工場団地には名古屋の精密機械工業が進出したが、地元の雇用にはあまり役立っていない。当然に、かつて賑わっていた銀座通り商店街はシヤッター通りと化している。この8月、実家から半径1キロにわずか2店しかなかったコンビニが1店閉鎖した。お客が少なく商売が成り立たないのだろう。地場産業の停滞・空洞化、住民の減少・高齢化で、さびれた田舎の将来は決して明るくない。 
 税収不足の自治体に国が交付する地方交付税がある(国の歳出の18%)。今年度、交付税がいらない成績の良い「不交付団体」は昨年より少し増え、東京都、愛知県に加え169市町村。しかし、残りの9割が未だ交付団体である(7月22日総務省発表)。しかし、来年度からは、交付税を削減するために、人口と面積で計算する新型交付税に移行する。人口が減少傾向にあり、産業の停滞にあえぐ自治体には死活問題となる。我が田舎も同様である。 
 だが、自治体は会社にあらず、人が暮らす場である。市場原理がまかり通ってはなるまい。 
 他方、空洞化する地方都市の再生に向け、市街地活性化法が施行された。共同住宅や公共施設を集約し高齢者に住みやすく、住民が歩いて暮らせる「コンパクトシティー」を目指すと言う。一旦、「改革」で破壊してしまった地方の暮らしをどのように修復させるのだろうか。単に、自動車を減らし、ちんちん電車を作れば済むというものでもない。 
 田舎は歴史薫る「やきものの街」を手掛かりにぜひ、再生して欲しい。そして、すべての地方が活き活きと存続するそんな改革を望む。