会報誌(DDKだより)

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2006年07月発行 第146号 DDKだより

巻頭言:これでよいのか日本

河野 先



 郵政民営化に次ぐ社会保障、医療制度改革は、生存権(憲法第25条)が侵すことのできない永久の権利であり、国もこれを尊重保護する義務があることを頭から無視している。 「いざなぎ」景気を超えても銀行や大企業がうるおうだけで、富士山型格差の一人勝ちである。他方自殺者が8年連続して3万人を超える世の中で、果たして小泉内閣は成功したのだろうか。 
 日本ほど社会生活が経済至上主義に奉仕するように構築されている国、あるいは市民が消費に追い込まれている国はないだろう。そして、日本ほど豊かさのむなしさが深く感じられる国もない。 
 第1回経済白書を書いた都留 重人氏は、「改革なくして成長なし」のスローガンは果たして正しいのかと問い、郵政・道路公団の民営化問題から少子高齢化政策、日米関係のあるべき姿にまで言及・提言されている。(『市場には心がない』岩波書店) 
 “資本と人口のゼロ成長状態は、人間的進歩の停滞を意味するものでないことは言をまたない。そこには、従来と同様、あらゆる種類の知的文化と道徳的ならびに社会的進歩の可能性が開けていよう。また、人々の心が、ともかく先に進むことばかりにとらわれることがないようになれば、生活の内実を豊かにする余地も十分にあり、これが更に改良される見込みは、いっそう強まる”とジョン・スチュアート・ミルの言葉を紹介している。 
 より品格のある市場経済を創ることは、基本的には市場参加者(政府・企業・個人)による社会的責任の実践に依存すべきである。 企業国家日本は栄えるが、国民は苦しむ構図を憂うものである。都留氏の93歳とは思えぬ情熱と示唆を受けつぎ、日本改革の一歩としたい。