会報誌(DDKだより)

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2006年06月発行 第145号 DDKだより

金融・経営相談:不利益変更と業務上の都合とのバランス

Q.経営不振ですし、社員の成績があまりにもひどいので、当初契約どおりの給料を払うことができません。減額支給してもよいでしょうか。


今月の相談員 
経営コンサルタント
社会保険労務士 石田 仁 


A.ご承知のように、人を雇い入れれば、正社員やパート、契約、嘱託社員等名称にかかわらず、労働基準法(以下労基法)が適用され、会社(使用者側)は人たるに値する「最低限度の基準」を遵守するよう罰則付きで強制されています。勤務時間、休憩、休日、年休、給料、残業等労働条件に関する取り決めについては全て適用されるのです。 
 また、直接法令違反ではなくても、会社側が何の事前通知や説明もなく、経営難や本人の成績不良を理由に、突然、労働条件を変更すると不利益変更による無効が主張されるケースが多いことも注意しておかなくてはなりません。例えば、経営が厳しいので当初契約の週4日契約を3日に変更し、あるいは本人の成績がひどいので給料を3万円下げるようなことは全て社員側から見れば不利益変更となるものです。 
 しかし、この変更は変化の激しい経済環境の中では会社側が手を打たなければ存続が危ぶまれてしまうから取る戦略行為の側面もあります。不利益変更になるからと言って何も対策がないわけではありません。単に「経営が厳しい」や「成績が芳しくない」という漠然としたものではなく、その労働条件を変更しなければならない ①業務上の必要性、②それを回避する努力、そして ③充分な説明を尽くせば、業務上の都合による労働条件の変更として肯定される場合があることも留意して欲しいと思います。