会報誌(DDKだより)

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2006年05月発行 第144号 DDKだより

巻頭言:便利さとぬくもりの共存がいい

専務理事 石田 仁



 駅のホームで買い物をする。新聞、雑誌に限らず、疲れて甘い物が欲しいときにはチョコレートや飴も買う。売店の社員さんは男女を問わず、手際よい。しかも暗算の天才である。お客が各自バラバラに商品を取り、現金を差し出しても、見事なスピードと正確さでつり銭を返してくれる。その間、ほんの数秒。進入してくる電車にも間に合う。しかし、最近KIOSKにバーコード仕様のレジが導入された。いつもと使い勝手が違うのか、スピードが減殺され、つり銭の出も遅くなった。ここでは、人の能力の方がはるかに勝っているのがわかる。 
 近所のお弁当屋さんでもしかりである。何しろ昼時になるとあちこちからお客が集まり、飽きのこないHOTな手作り弁当が売れている。息子が対面で調理し、母親が容器に詰める。父親は勝手気ままなお客をさばきながら、間違えないように注文を受け、弁当を渡し、代金をもらう。時に、鯖焼きと鯖の味噌煮を間違えたり、入れるべきフルーツを忘れたりするそそっかしさが憎めない。狭い入口で混雑しているが、人のぬくもりがある。ところが、最近、店内に自動券売機が登場。お客は並んで食券を購入し、係りのご主人に渡すのである。何か、違う。「機械を入れなくても、せわしく、声を掛け合い弁当の注文を取った方が活気があっていいのに」と余計なことを言ったら、ご主人は「つり銭を間違えるやら、後の計算が大変だから」と弁解していた。 
 小さなお店は味や価格もさることながら、家族が汗水たらし働いているそのぬくもりに付加価値がある。何も便利さとスピードを求め、機械化することはないのにと思う。 
 便利さやスピードばかり追い求めると、いつの間にか大切な人の能力やぬくもりを忘れてしまうのである。 
 多少無骨でも、ビジネスは人間の持ち味を活かさなくては成功しない。