会報誌(DDKだより)

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2005年11月発行 第138号 DDKだより

巻頭言:サービサー問題を考える

亀井賢伍



明暗分ける貸し手と借り手 
 銀行の不良債権処理は一段落したと言われています。たしかに全国銀行の不良債権は減っています〔注1〕。重しがとれ晴れ晴れしています。 
 一方の当事者である借り手には一向に解放感は見られません。銀行から債権を譲り受けた金融サービサー(債権回収業者)による取立の脅威に直面しているからです。片手落ちです。 
 
サービサーの手口 
 先月私は「銀行の貸手責任を問う会」の総会で、サービサーの取立の実態を聞きました。サービサーは行儀は良く、脅迫や大声で威嚇するようなことはしません。しかし心理的圧迫を狙って、粛粛と法的手続を進めます。何せタダ同然で「仕入」〔注2〕していますから手間ひまと費用は惜しみません。例を挙げますと①債権者による破産申立〔注3〕、②詐害行為取消訴訟、③共有物件の持分仮差押などです。銀行なら、実益がない、やり過ぎ、品位に欠ける、として手をつけない措置です。殆んどが、債務者側が過剰反応しなければ、空振りに終るものですが、存外日本の庶民には効き目があるようです。動じないことが大切です。 
 
「言い分」が消える無念 
 サービサーへの譲渡については①債務者の同意をとらない、②譲渡価格を開示しない、など改善すべき点が指摘されています。私は、これに加えて、次元は違いますが、銀行に責任のある融資の譲渡について述べたいと思います。バブル期の融資には銀行に責任がある融資が少なからずあります。銀行も内心忸怩たる思いで担保処分後は、さらなる追求はしない心積りでいるケースがあります。事実上落着しているものです。而るにこれがサービサーに移ると、それまでの経緯、情理から達した「合意」がご破算になります。リセット後に残るのは無機質な債権・債務の数字だけです。無念至極です。非情の取立が後ろめたさなく行われます。 
 銀行は、自らは回収する意思のない無担保債権の譲渡はせず、内部で直接償却し禍根を絶つべきことを強く求めます。
 
 
〔注1〕 全国銀行の不良債権残高推移(単位・兆円)               \'02/3  \'03/3  \'04/3  \'05/3  
    43.2   35.3    26.6    17.9 

                   
〔注2〕 無担保債権を一律1件1,000円で6300件買い取り(仕入630万円)、112億円回収した例が衆議院予算委員会で明らかになりました。 〔注3〕 破産宣告により資格を失う人(弁護士など)に対して行っています。