会報誌(DDKだより)

DDK Newsletter

2004年02月発行 第117号 DDKだより

金融・経営相談:銀行が行っている「与信格付制度」とは

Q.某銀行から、「貴社は与信格付のランクが低いので、貸出金利を引上げさせてほしい」と要請してきましたが、詳しくは話してくれません。
「与信格付制度(システム)」とは、どのようなものでしょうか。


今月の相談員 
中小企業診断士
中小企業組合士 伊藤 勝 


A.「与信格付制度」とは、銀行が与信(貸出等)を供与している(又はこれからする)取引先の信用リスク(銀行が将来損失を被る可能性)を客観的に評価する制度です。  
 銀行は既存先や新規先を数段階の格付評価により、融資取組方針を個社別に決めています。この評価の中身は①財務評価項目と②非財務的評価項目に分かれ、各々評点を算出して総合評点により今後の取引方針(貸付金額の上限、金利の設定、担保・保証人の追加等)を決定すると同時に、正常取引先と要注意取引先、破綻懸念先等の区分(分類)にも活用されています。  
 旧王子信金公表の与信格付シート及び解説によると、① 財務評価項目(ウェイト約70%)は、「自己資本比率、正味実力(*1)、金融余力(*2)、資金調達余力(*3)、利益状況等」10項目あります。② 非財務的項目(ウェイト約30%)は、「業歴、業界見通し」や「代表者の人物評価、経営能力、担保等保全状況、取引振り」等8項目があります。  
 大手銀行の場合は、①を相当程度重視し(②については軽視)、最近では決算書類等による財務分析のみを頼りに、無担保ローンに力をいれています。  
 一方、地銀・信金等の地域金融機関は、代表者個人の力量で成り立つ中小企業の特性に配慮し「地縁・人縁や代表者の個人資産、取引歴」に配慮した格付けに努めているところも多いようです。   
自社でもできる「格付診断」  
 二期の決算書があれば、前記①については算定できます。格付け算定のための「格付けシート」および算定方法の解説資料について、ご希望があればご連絡ください。またDDK相談員がアドバイスも致します。  
 貸し渋り、貸し剥がしはまだまだ続くと思われます。  
 「銀行は自社をどのように見ているのか」「銀行交渉でどこをポイントにしたらよいか」など自社の強みや弱み等体力を知っておくことは、「敵を知り己を知らば百戦危うからず」です。

*1「正味実力」
貸出先がある時点で解散した場合、資産負債を全て整理した結果、株主の手元に残る資産(個人資産を加味)を算定。真の体力を示す指標。
*2「金融余力」
資金繰りの安定度を算定。資金循環の円滑さを示す指標。
*3「資金調達余力」
資産を売却又は担保に入れることにより、いくら資金が調達できるか算定するもの。