会報誌(DDKだより)

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2004年02月発行 第117号 DDKだより

巻頭言:人間疎外の時代に想う 

前顧問 河野 先


 私は、この1月で年男の72歳です。戦前、戦中、戦後そして追いつき追い越せと「経済大国」「一億総中流意識」からバブル崩壊後の長引く大不況を体験しています。
  緊張感から解放感。貧しかったが希望が持て、お互いに支え合った時代がありましたが、今は人間疎外の空虚で索漠とした時代感です。 
 生きる、働く、暮らす基盤がそこはかとなく崩れ、不安がよぎり、明るい未来が展望できないこの頃です。 
 市場原理や競争のメカニズムで経済発展するとした「構造改革」は、人間の尊厳を壊すものです。働き、生活している人たちが、きちんとした人間的尊厳を維持しながら生きていけるような経済・社会基盤を政治が築いていけるかが、いま問われています。 
 しかし、現実の税制、社会保障制度改正の流れは、政府が本来行うべき日本国憲法の諸権利を、日本経済の再生、財政危機の名のもとに放棄する一方、公共工事の一つである道路公団改革では、既得権益を温存し民営会社が借金をして、何がなんでも高速道路を作り続け、莫大な税金が使われます。 
 競争優位性と利潤追求は、MADE“BY”JAPAN戦略の推進で、日本経済と雇用の責任を放棄したものです。
  89年に岩波書店から出版された暉峻淑子さんの「豊かさとは何か」は、経済大国・日本でなぜ豊かさを感じられないのかと問題提起したものでした。昨年5月に続編「豊かさの条件」を出し、現在の日本の労働と生活の問題として、最初の部分で若い世代の労働問題、派遣労働、フリーターの実態を取り上げ、子供の事件も、社会の矛盾の爆発口に他ならないと紹介しています。そうした問題を根本的に問い直し、「人間はなぜ助け合わなければいけないか」と問いかけています。 
 人間社会に必要な共同部分について、多少とも私達の協同組合事業で連帯できることはないものか、沈思黙考の年明けでした。