会報誌(DDKだより)

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2004年01月発行 第116号 DDKだより

巻頭言:GDPではなく“国民の幸せ度”を競う

河原 八洋


 新年明けましておめでとうございます。皆様方には、よいお年をお迎えのこととお喜び申し上げます。 
 わたしは、米英軍がイラクに進攻する少し前の3月7日~13日まで、中央アジアのブータン王国へ行って来ました。以前にインドへ旅行したとき、北部のブッタガヤで五体倒地を繰り返す仏教徒グループに出会いました。日本人そっくりの顔立ちでしたので尋ねてみるとブータンの人たちでした。なんだか親しみを感じ、印象に残っていました。それでお誘いを受けたとき即座に行って見ようと思ったわけです。 
 ブータン王国は、ヒマラヤ山脈の麓にあって、インドと国境を接しています。標高1700mの比較的開けたパロ、ティンプーの2つの都市周辺を小さなバスで周ってきました。主要産業は農業ですが、平地は無く機械や車が入らない棚田です。 
 印象に残ったことは、人の善さです。子供も大人も何の気取りや虚勢も無く、謙虚で、素朴で、とても友好的なのです。カメラを向けるとその場に立ち止まってポーズをとってくれます。物乞いをする人、押し売りをする子供等も居なくて、誰も物をほしがりません。物は少ないのですが、心が豊かなのです。 
 決して優しくない自然環境のもと、最先端の文明から少し遅れていても、みんな幸せそうに見えたのは、「GDPを競わない、国民の幸せ度を競う」と宣言された国王のおかげでしょうか。その昔、日本に来た宣教師たちが祖国へ書き送った「人情にあふれて優しく、清潔で勤勉な美しい平和な国、日本」と同じような印象を受けました。 
 おりしも昨年は、「江戸開府400年」ということで色々な催しがありました。江戸庶民の生活は「宵越しの銭を持たない」と見栄が切れ、年金制度があっても不安いっぱいの今日とは大違いだったようです。300年の永きにわたって戦争が無かったということも見習うべきものだと思います。そこには川に橋を架けなかったり、馬車を禁止したりして流通を抑え、むやみな経済発展を抑制した、今日とは逆の幕府の発想が見えます。 
 お金ではなく人間を中心にした発想が無ければ、国益を旗印にした争いや、毎日のように起きている殺人事件など無くならないと思います。 そのように思いませんか。