会報誌(DDKだより)

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2003年07月発行 第110号 DDKだより

巻頭言:市場原理主義の正体 

亀井 賢伍


 市場原理(至上、万能)主義の克服が、日本再生にとって緊要な課題となっています。少し整理してみたいと思います。
 一つは市場原理主義と市場経済を混同してはならないという事です。  
 市場経済は、労働や企業の経済活動のモノサシとして有用です。受け継ぎ発展させるべき価値ある成果です。資本主義と密接な関係にありますが、資本主義と運命を共にするものではありません。  
 一方、市場原理主義は、市場競争を万能視し、市場に任せれば世の中万事うまく運ぶと「信心」し適用範囲を度外れに拡げる人間理性不信の思想です。世界標準にはなり得ません。  
 二つ目は、全て物ごとは度が過ぎると誤りに転化するということです。  
 市場経済も資本主義の勃興期には進歩的役割を果しましたが、資本主義の発達につれ否定面である弱肉強食的競争、拝金主義、道義の頽廃、不平等などが顕在化し強まってきました。こうした弊害を是正するため人類は、政治システム、社会システムを整え磨きをかけてきたのです。  
 市場至上主義は、市場競争がなじまない福祉、教育、環境などの領域にまで分別なく侵入し惨害を拡げています。歴史逆行の復古思想です。  
 三つ目は協同の役割です。最近アルゼンチンの大統領は「国家こそが社会的不平等の偉大な修正者として活動すべきだ」と、押しつけられた市場万能主義の経済運営の軌道修正を表明しました。国家(政治)の役割の正当な復権を宣言したもので首肯できます。市場(自由)原理に基く民間営利セクターの突出に対し、公共性(平等)原理に依る公共セクターを対置したものとも言えます。私はこれに、協同(連帯)原理にたつ民間非営利セクターを加えたいと思います。大義、使命感を重んじ効率と公正・社会的責任の両立をめざす協同組織の成長は、他のセクターの姿勢を正すでしょう。  
 三つのセクターが特長を活かし、各々ふさわしい領域で存分に活動することにより人間が大切にされる社会を築くことが求められています。