会報誌(DDKだより)

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2001年03月発行 第82号 DDKだより

巻頭言:中小企業経営安定化特別保証制度の終了を前にして

参与  田口 良一       
     国民金融公庫出身
     祝経営研究所次長
     主な論文
     「商工ローンの膨張と銀行の責任」
     (『世界』2000年1月号)
  
  
 


 ①累計枠30兆円で実施された「安定化保証」制度は今月末で終了となる。一部の地域金融機関ではお客様に「最後のチャンスですから積増し利用をしませんか」と呼び込みを行っている。
 無担保・無保証人・無期限・無利息の資本を自己資本という。この「安定化」は自己資本に最も近い他人資本と言えるから、キャッシュフロー戦略として景気腰折れのこの際積極的に検討すべきであろう。
 ②「安定化」は金額の10%が延滞債権(代位弁済)となり、最終的には5%が回収不能になることを予定したもので、計算し直すと利用者の20%が延滞し、10%は返済不能者となるという予測である。90%の中小企業を、貸し渋り、長期不況下の構造変動の被害から救出することが政策目標だったのである。一部マスコミは無駄だと誹謗するけれども、中小企業にとっては死活の緊急対策であった。
 ③問題は、この制度終了後についてである。この制度で注入されたキャッシュが返済(社外流出)し続けたあと、次の輸血が拒まれたら経営はミイラになってしまう。
 通産省は、昨年12月「今後の保証審査の方法について」という方針を発表した。これによれば8項目の「具体的な取扱い例」として審査基準(ネガティブリスト)が示されている。同時に無担保、社内保証の限度枠は5,000万円として存続し、条件変更歴があっても再保証を拒否しないとの原則も確認されている。
 上記8項目の基準は、「安定化」のそれに比べると改悪された表現となっている。
 例えば、①大幅な欠損、②大幅な繰越欠損、③債務超過、④税金滞納、の各項目には、「早期解消見込」の形容詞が付けられている。
 この「早期」をめぐる攻防が生死を分けることになるが、「安定化」で獲得した陣地を放棄しない構えで臨まなければなるまい。