介護保険を画餅にしない

  専務理事  石田 仁       
     経営コンサルタント・社会保険労務士
     東京中小企業家同友会理事
     同 専門家グループ部会幹事長
     東京都労働経済局 労働講座講師
     著書『就業規則で会社がかわる』
     (労働旬報社)ほか論文多数

 


 「鳴り物入り」で登場した介護保険が2か月を経過しました。将来の年金が減額されるにとどまらず、新たに保険料の負担もあり、とんでもない悪保険と思っていた矢先、郷里の両親にも介護の必要性が生じてきました。足の衰えや軽度の痴呆症状が目立ち、入浴や食事の支度、通院等の日常生活が困難になってきたのです。今のところ近くの身内が無理をして職場を休みながら対応しているところです。これとてもいつまでも続けられません。食事や入浴は毎日の事。自力でできないので介護保険の申請に踏み切りました。
 ところが、法律でサービスを受ける資格があっても、運営主体の自治体には、出張の食事サービスやタクシーによる通院介護がメニューにありません。現行法では、民間事業者にとって食事等の家事援助サービスより身体介護の方が「うまみ」があるからです。
 ある程度財源を保障し民間に参入を促し、市場ベースで介護の基盤整備を進めようという本制度導入の趣旨とちがっています。
 病院へ送迎してくれる介護タクシーは現在全国で50社程度です。しかも、介護保険のメニューに入れている自治体は数える程しかありません。適用外でも、3,000円程度で病院へ送迎を実施しているタクシー会社もあると聞きますが、民間事業者が参入できる条件整備が急務です。国や自治体が財政負担を惜しんではならないでしょう。
 財政再建か景気回復か近年最大の争点になっている国政です。来るべき総選挙では、公共事業一点張りの景気対策から雇用や社会保障を中心に据える政策論争も期待したいものです。