特別保証制度の政策効果について


  理事  亀井 賢伍       
       商工中金出身
       

 


肯定的評価と否定的見方

 平成10年10月に始まった特別保証制度の効果については大方の評価は肯定的ですが、一部に否定的見方があります。
 後者は、今後、この種の政策(財政支出)を切り捨てようとする意図をもって、ふりまかれており、座視できません。

現場実感に合う肯定的評価

 日本商工会議所は、昨年12月、本制度の効果として
@ 7,000件の倒産回避と、それによる6万人の雇用維持
A 1兆円の財政支出で20兆円の信用創造という財政資金の効率的活用を挙げています。
 本制度で救われた実例を数多く見てきた私は、この見解に心底同意します。

二つの否定的見方

 一つは、本制度は、早晩淘汰されるべき企業を一時延命させるだけで、構造改革をおくらせる。ひいては日本経済再生にとってマイナスになる、というものです。
 二つは貸手(銀行)も保証協会もノー審査で無責任、借手もこの資金で外車を買ったり、飲み食いしている、といった「放言」の類です。
 ここでは一つ目の問題に絞って論じたいと思います。

企業の盛衰と景気

 企業の盛衰にとって、経営者の能力・執念・責任感などの主体的条件が決定的であることは自明のことです。かと言って、企業の浮沈を、経営環境と全く無縁とするのは科学的ではありません。
 本制度は、失政による不況、まさに「激甚災」というべき事態に対して、社会政策的意味合いもこめてとられた緊急対策でした。
 1年間の据置期間が設けられた背景には、この間に景気回復にもっていきたいとする暗黙の「前提」があったことは否定できません。
 “何れ潰れる”といったものの見方は、このダイナミズムを理解しないものです。

ソフトランディングの効用も

 本制度は、短時日に倒産が続出すること(ハードランディング)から生まれる社会的混乱・不安を未然に防止しました。
 制度利用者のなかから、その後、万策つきて行き詰まったものが出たとしても、この間、事業転換や従業員の再就職、M&Aによる経営資源の有効活用など、ソフトランディング(軟着陸)の効用があったことに目を向けるべきです。