事例
紹介

求償債務のある企業を引き継いでも
保証協会の保証は得られる

 倒産した企業の事業を引継ぐ

 A社は、不況の深刻化のもとで平成4年より売上が3分の1に激減、不況入り直前に借入した設備資金6億円の重圧も加わり万策つきて平成8年事実上倒産しました。
 業歴16年の同業B社はA社の技術、設備、人材、顧客に着目、平成9年、A社の主な事業を引継ぎました。
 B社は平成10年11月、X保証協会に安定化特別保証5千万円の申込をしたところ、被承継企業(A社)がY保証協会に求償債務(注)を有していることを理由に保証を拒否されました。
 


今月の相談員
  理事  亀井 賢伍
    商工中金出身
    前専務理事
    元第一経理経営相談室長

 不当な保証協会の保証拒否

 安定化特別保証制度の画期的有用性は、ネガティブリスト方式、つまり拒否基準を限定列挙し、これに該当しない限り保証するシステムにあります。
 リストの中に「信用保証協会に対し求償権債務が残っている者…」という項目はあります。そしてA社の求償債務の存在は事実でした。しかしB社には当てはまりませんので、一方的拒否は不当です。


 申込通り保証承諾で決着

 直ちに再審査申請書を提出、さらにX保証協会に出向き、補足説明しました。反論の主旨は以下のとおりです。
 @申込人(B社)は、昭和57年設立以来16年間の事業実績があり、A社の受け皿会社などではない。
 A倒産企業乃至その経営者が、保証拒否等の経済的制裁をうけることに異議を申立てるつもりはないが、倒産企業の事業を引継いだ企業にまで制裁を広げることは筋違いである。
 A社の求償債務の存在をB社に拡張適用するのは牽強付会もいいところで納得できない。
 B事業承継のプラス効果と経営者の渾身の努力により、B社の業績はもくろみ以上に向上し、返済財源も十分見込まれる。
 C事業の承継はミクロの経営判断に基づくものだが、経営資源の有効利用という点で日本経済に有益な結果をもたらしている。公共性ある保証協会や銀行は、こうしたマクロの効果をみるべきではないか。
 B社が事業を引継いだことにより、少なくとも、雇用の確保、設備の有効利用、技術の温存、連鎖倒産防止がはかられている。
 数日後、X保証協会は拒否回答を撤回し申込み通り保証してくれました。
 (注)代位弁済をうけたことによる債務。

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