「買ってはいけない」のに買ってしまう

  専務理事  石田 仁       
     経営コンサルタント・社会保険労務士
     東京都中小企業家同友会理事
     同 専門家グループ部会幹事長
     東京都労働経済局 労働講座講師
     著書『就業規則で会社がかわる』
     (労働旬報社)ほか論文多数

 


 『買ってはいけない』(「週刊金曜日」別冊ブックレット2)が売れている。雑誌「週刊金曜日」の連載企画「買ってはいけない」で紹介された業界大手の“おすすめできない”商品が満載されている。「パンの王様がつくる添加物の塊、ヤマザキクリームパン」、「白ペンキでぺタペタ染めあげるアタック」、「遺伝子組み換え推進企業がつくるキリンラガービール」等あげればきりがない。このキャッチコピーだけで、ぞっとしてしまう。日本を代表する企業が作り、コマーシャルでも大量に宣伝され、その地位を不動のものにしている商品だからである。まさか、いつも使っているあれがと思ってしまうのである。
 根も葉もないガセねたを集めた独り善がりの記事でない点が受けた。この雑誌にはそもそも広告スポンサーがいない。定期購読の読者が支える雑誌だからこそ自由に物が言えるようだ。
 巻末の執筆専門家3人による座談会がおもしろい。
 連載開始後、大手による抗議や脅迫などなかったという。実際には、裁判を起こせばマスコミで取り上げられ厄介だし、それならたいした影響力もなさそうだからと無視をきめこんだようだ。これで大手は困ってもいないし、消費者の不買運動が起きているわけでもない。しかも、私自身遺伝子組み換えとうもろこしを使ったビールを飲んでいる輩だ。
 これは何であろうか。体に悪いのはわかっているのに使ってしまう、添加物がたくさん含まれているのに食べてしまう。メーカーも法律に触れているわけではないから、そんなこと百も承知で大量宣伝を流す。テレビも雑誌もスポンサーには頭があがらない。では、メーカーはというと、政治献金で政官と癒着している。
 日本の腐敗構造と同じ模様が見えてくる。
 問題を個人の価値観に置いてしまえばそれまでだ。既存商品の安全性が問われ、次々と自然食や無添加物の利用者が増え、環境全体があらためて問い直されていく変化のプロセスと考えるべきであろうか。
 メーカーに猛省を促したい。