税収構造 財源 使途の追求を
−21世紀を迎えるに当たって−

  相談役  河野 先       
     (株)第一経理 会長
      税理士
      全国中小企業家同友会全国協議会幹事長

 


  政策判断の誤りによる9兆円に及ぶ国民負担増は、景気の悪化となり、加えて金融問題が中小企業経営を直撃している。
 消費税の導入に際して、高齢化社会論があったが、導入後の財政支出構造にみる社会保障関係費は、中小企業対策費と同じく抑制されている。しかも昨年9月より健康保険料率の引き上げと医療保険の改正が行われている。
 昨年末に成立した財政構造改革法は、財政健全化目標として、2005年までに赤字国債依存を脱却するとした。“聖域なき見直し”と言いながらも公共投資基本計画や中期防衛整備計画等は期間の延長として温存し、社会保障等については歳出を縮減するとしている。
 参議院選挙の結果、同法は凍結としながら、今、年金法改革が俎上にのぼっている。また、不況対策は金融機関の救済と国際水準の税率引き下げを目標とした税政改正、そして相も変わらず国債を財源とした公共事業となっている。
 年金法改正では5つの選択肢を示しながら、年金料率の引き上げ、給付年齢の引き上げと給付金の引き下げに軟着陸を目論んでいるが、早くも某経済団体は年金料率の引き上げに替えて、財源に3.2%の消費税率の引き上げを要望している。
 地方財政の破綻が報道されだしているが、国、地方自治体が抱えている不良資産はゼネコン浪費型公共投資が生み出したもので、その利息を含む維持費は大きな負担となっている。
 外形標準課税が急浮上しているが、赤字法人も所在地の地方公共団体から益を受けているとした新たな課税方式、また、2000年から始まる介護保険法の保険料も40歳以上の人に対する形を変えた税金となってくる。
 税制改正の流れを含め“広く薄く分かち合う”事の積み上げはすでに10%台への消費税率引き上げが射程距離に入ったとみるべきだ。
 今こそ、税負担の実態と国の税政、税金の使途を知ることで、何としても国民本位の税財政のあり方を問うべきだと思う。