格差社会に挑戦して

河野 先

 郵政民営化の是非を唯一の争点に「改革」を声高に唱えた小泉自民党は、閉塞感に対する漠然とした有権者の期待を受け、予想を超えた多くの議席を獲得した。
 くしくも選挙当日、ドイツ文学者の池内紀氏が、『ナチ・ドイツの言語』(宮田光雄、岩波新書)を引きながら「単純化」「断定化」の政治効果と称したそのものだと感じた。(日経9月11日、半歩遅れの読書術)
 今後予定されている増税、改憲等は国民に問われず、これまで進んだ小泉改革の4年の様に、経済財政諮問会議の骨太方針に沿った国民不在の国会運営が続く不安がある。
 政府税調の6月の「個人所得課税」の論点整理は、将来的に消費税と所得税を二大基幹税とする大庶民増税として検討され、すでに一部は始まっている。
 また8月1日に発表された自民党の新憲法案は、憲法前文と9条2項を削除、「戦争の放棄」を「自衛軍を保持」し戦争の出来る国へ、「国民の権利及び義務」は、国益優先、軍事を含む秩序の優先を示し、生存権の保障も福祉も投げ捨てた。
 こうして、三位一体改革を含め、官のリストラで安上り労働がより一層民へ移動し、非正規労働者は全雇用人口の半分に届くだろう。
 さらにサービス残業が集中する年収400万円以上のホワイトカラー労働者を時間外労働の適用からはずすつもりだ。
 好況とはいえ一握りの大企業のみが潤う歪んだ景況下で、経営問題は変化が激しく戸惑うことが多い。いつの間にか格差社会は歴然とし、国民負担は増える一方、将来不安はより深刻となっている。世界経済全体を見ても米国の双子の赤字、中国オリンピック後、そして日本の「消費税率引上げ後」の2008〜9年は何とも不安だ。
 今こそ、腰を据え、中小企業家同友会が提唱する“21世紀型企業づくり”で、地域に根ざした人間尊重経営を指向し、人に依拠した学習、実践型の強靱な企業づくりに挑戦したい。
 
第一に、自社の存在意義を改めて問いなおすとともに、社会的使命感に燃えて事業活動を行い、国民と地域社会からの信頼や期待に高い水準で応えられる企業。第二に、社員の創意や自主性が十分に発揮できる社風と理念が確立され、労使が共に育ちあい、高まりあいの意欲に燃え、活力に満ちた豊かな人間集団としての企業。