「改革」を標榜した小泉内閣による年金「改革」案が発表された(11月17日)。内容は将来の保険料を予め法律で決め、その保険料に達するまで毎年、自動的に引き上げていく保険料固定方式の導入である。厚生年金の保険料を毎年引き上げ、2022年度には年収の20%に(保険料は労使折半で現行は13.58%)。同時に国民年金の保険料も毎年600円ずつ引き上げ17,300円で固定(現行は13,300円)。給付額は、現役世代の手取り賃金の50%を下限に削減するというものである(現行モデル夫婦2人で月額23.6万が54.7%に、下限として50.8%を想定)。
 ところで、「改革」案の前提には基礎年金部分への国庫負担の2分の1引き上げが織り込まれている(現行は3分の1であるが、負担増は2000年国会で決定済み)。引き上げについては、政財界や国民の多数も賛成の立場であろう(財務省は反対)。2階立て年金部分の1階である基礎年金部分を国の負担で賄っていくことで制度が安定し、国民も安心できるからである。
 他方財源論がにぎやかである。150兆円の年金積み立て原資の活用論はさておき、当面の国庫負担増を何で賄うか。1つは既にマスコミに報道されているサラリーマンに負担をおっ被せる定率減税の廃止。これは閣内不一致のようである。もう1つは消費税の引き上げである。後者を財界や大企業は熱望している。当然のことながら、腹の痛まない方法を探しているのである。一部輸出大企業は消費税を1円も納めていないし、導入以来の消費税総額136兆円とほぼ同額の法人税が減税されているのを見れば明白である。しかも財界は今回の「改革」案に対し、保険料の引き上げは15%までにとどめ、もっと給付を削減せよと反対。保険料の企業負担が重く競争力低下を招くからという。
 問題は容易ではないが、少なくとも血のかよった「改革」を掲げるならこれ以上中小企業者や国民に負担を強いるのは止めて欲しい。財源は無駄な「公共事業費」や「防衛費」等の歳出見直しで充分可能ではないか。イラク戦争に膨大な資金を拠出するぐらいなら年金の安定した支え手を増やす景気・雇用政策に転換することを望む。
 
誰のための年金「改革」か
 石田 仁